第十回 水没!(後編) 水没!(後編) 2018年2月23日 目次: 1.修理工程 ~分解・洗浄~ 2.修理工程 ~部品交換~ 3.復旧完了したらすぐにバックアップ! 4.水没修理の目的 5.ちなみに、防水端末ってどうなの? こんばんは。スマートまっくす代々木駅前店 副店長の蒲倉でございます。梅雨入りしているはずですが、なかなか雨が降りませんね。水不足が心配です……。が、嬉しいことも一つあります。スマホが雨に濡れにくい!つまり……水没しづらい!ということで、今回のテーマは、前回に引き続き「水没」。前回は、水没させてしまってから修理店へ持ち込んで頂くまでの注意点をお伝えしました。ここからは、お店での復旧の様子と、その後のスマホの注意点について、見せまっくす! 1.修理工程 ~分解・洗浄~ 水没復旧のご依頼を頂いたら、状況の聞き取りと修理時の注意事項をご説明して、作業スタートです。まずは分解!水没修理でまずするべきは、メイン基板の取り外し。水に濡れると全体的に脆くなってしまうので、通常の分解よりもさらに慎重に手を進めます。 SONY Xperia Z3 パカッと開けると水滴がこんにちは。ギョッとしますが、実はこの状態、意外と復旧率が高いです。水没後すぐに持ってきて頂いたということだからです。 ASUS Zenfone3 ZE520KL基板がフリーになったら、両面をよく観察します。腐食や焦げが発生していないかのチェックです。そして外せる部品は全部外して…… ASUS Zenfone3 ZE520KL 超音波洗浄機へin!この液体はアルコールです。基板を丸洗いして水分と不純物を飛ばし、発生してしまった腐食も浮かせます。そして柔らかい歯ブラシで、浮かせた腐食を落としていきます。ここの洗浄次第で復旧の結果が変わることもある、地味ながら重要な工程です。 2.修理工程 ~部品交換~ 洗浄が一通り終わったら一度組み直し、動作確認します。部品交換ナシで起動・操作できればベスト。もしできなかったら? ここで部品交換を検討します。水没でダメになりやすく、かつ重要度の高い部品といえば、バッテリーとディスプレイです。 SONY Xperia Z4 全く起動しないならバッテリー、起動している様子はあるけど表示が異常ならディスプレイが怪しいです。他にも、サブ基板、基板の接続ケーブルなど、スマホの機種によって交換が必要な部品はそれぞれ。判断には経験がモノを言います。基板上に実装されたタッチコネクタが錆びてぼろぼろ……なんて時は、ハンダ作業でコネクタを交換することもあります。 3.復旧完了したらすぐにバックアップ! なんだかんだで復旧しました。ヤッター!大事なデータも残っていました。ヨッシャー!だが安心するのはまだ早い!その大事なデータ、大急ぎでSDカードやクラウドストレージにバックアップしましょう。スマホを持ち帰ったらすぐにでも、可能ならば修理完了したその場で、アプリ等を使ってまとめて保存するのが重要です。なぜか? SONY Xperia Z5 一度水没した端末は、今後の動作が不安定になります。送話マイクが入らなくなる、SIMカードを読み込まなくなるなどの、致命的ではない不具合が残ったり、ある日突然、電源が入らなくなり、今度は何をどうがんばっても起動できない……最悪その可能性もあります。水に濡れた基板・部品の強度が下がり、弱い衝撃で破損してしまう。洗浄でも取りきれなかった僅かな水分が、時間をかけて基板を腐食させる。原因としてはいくつか考えられますが、いずれにせよ、「一度水没した段階で、今後の動作については保証ができなくなる」ということは、しっかりと認識しておきましょう。 4.水没修理の目的 水没したスマホを復旧させたとしても、今後動かなくなるかもしれない。それだったら、そのスマホは諦め、修理代ではなく新規端末購入代にお金を充てるほうがよいのでしょうか?それも一つの正解です。水没スマホを復旧させる目的は、「データのバックアップ」 これに尽きます。写真や連絡先、LINEアカウント、やりこんだゲーム……これらを次のスマホへ引き継ぐために、一時的にでも操作できる状態へ持って行くのが修理の目的なのです。 Huawei P9 Lite 逆に言えば、こまめにバックアップを取っているとか、大事なデータが入っていない場合、必死で復旧させる意義は薄くなります。また、バックアップのための修理ですから、最低限の機能さえ復旧できれば、それ以上の修理はあまりオススメしません。・電源が安定的に入る・画面が点く・タッチが利く・SDカードを読み込む or インターネットに接続できる最低でもこれだけ動作できれば、大体の端末にプリインストールされているバックアップ用アプリを使い、データをSDカードもしくはクラウドストレージに保存できます。 Huawei P9 Lite それ以外の機能が壊れていた場合。修理箇所が増えると、それだけ部品代・作業代が発生します。お金をかけ、しっかり機能するように直したはいいものの、一か月ほどで電源が入らなくなってしまった……これでは、コストと結果とが見合っていません。そんなわけで、動作確認の結果をお伝えした後、ご要望がない限りは修理を行わないのです。さて、端末をご返却して作業完了です。一度分解した端末は、防水機能が弱まってしまいますので、今後の使用の際にはお気をつけください。 5.ちなみに、防水端末ってどうなの? 水没復旧に持ち込まれる機種の傾向としては、iPhoneシリーズSIMフリー機はもちろんですが、XperiaやGALAXYなど、防水機能があるはずの端末もやってきます。 SAMSUNG GALAXY S7 edge お風呂でスマホを楽しんだり、汚れをジャブジャブ水洗いしたりする広告もありますが、 「その通りに使ってたら急に調子が悪くなった。 よく見たらカメラ部分に水滴が……」なんて話はよくあります。しかも、防水端末は気密性が高いですから、一度水が侵入すると、今度は内側に水を閉じ込め、被害を拡大させてしまいます。防水端末は、あらゆる水分から完全防護・水中使用もどんと来い!というわけではありません。マニュアルを読むと、意外なほど厳しい使用条件(常温の真水じゃないとダメ、温度差には要注意、など)がありますし、それをしっかり守っていても安全安心とは言い切れません。そもそも、防水端末の防水であるゆえんは、内部に水が入り込まないような構造になっている、という点であり、内部に水が入ってしまうと、当然のように故障します。 SONY Xperia Z5 水を防ぐための防水テープやパッキンに不良があれば、水は侵入します。初期不良、高温、衝撃、経年劣化など、考えられる原因もたくさん。というわけで、私の個人的な意見ですが、防水だからといって気軽に濡らしたり、お風呂に持ち込んだりはしたくありません。安価に入手したものを、いつ壊れてもいいという前提で、ならアリでしょうか……。というわけで、水没にまつわるエトセトラでした。これからの季節、水遊びの前にポケットの中の確認を忘れないようにしてくださいね! 記事編集担当蒲倉 その他特集記事はコチラ 修理のお問い合わせはコチラ